けれど、そうして芽生え始めていた視線とは裏腹に、現実の生活は静かに、そして確実に崩れていった。
街の光に反応し、スマホを向け、写真を撮り、Instagramに投稿することには、まだ小さな高揚があった。画面の中では、切り取った景色がかろうじて形を持ち、自分の見ているものが誰かに届いているような感覚もあった。
だが、その一方で、自分自身の生活の輪郭は少しずつ曖昧になっていった。うだつが上がらず、仕事を失い、日々を支えていた均衡は崩れ支えだと思っていたものも、気づけば静かに形を失っていた。
自由になったのではなかった。ただ、留めていたものが外れていっただけであった。朝起きる理由も、街を歩く意味も、昨日と今日をつなぐ感覚も、少しずつ手から抜け落ちていった。

写真を撮ることは続いていたが、それは何かを築く行為というより崩れていく時間をわずかに留めておくための反射に近かったのかもしれない。
光は相変わらずそこにあり、街もまた何事もないように動き続けていた。けれど自分の内側では、同じ速さで世界を見ることがもうできなくなっていた。何かを立て直そうとするより先に、自分は流されるようにマカオへ向かっていた。
そこには強い光があり欲望を肯定する空気があり、敗北を一時だけ忘れさせる眩しさがあった。自分にはその光が必要だったのかもしれない。あるいは必要だと思い込もうとしていたのかもしれない。
だがその光は、長く身を置くほどに人の感覚を鈍らせ、何を失っているのかさえ見えなくしていく。華やかさの中にいれば自分の空白も見なくて済む。そうしているうちに、自分もまたその街の光の中で自分自身を少しずつ見失っていったのである。
Chapter 3
Losing Work, And Watching Life CollapseBut while that gaze was beginning to form, my actual life was steadily breaking apart.
I lost my job.
The structure that had held my days together weakened.
Things I had believed would remain stable began to disappear, one after another.
It did not feel like freedom.
It felt like falling.
Somewhere in that collapse, I found myself moving toward Macau.
Perhaps I wanted escape. Perhaps I wanted numbness.
Or perhaps I simply had nowhere else to place the weight I was carrying.
Macau was full of brightness, speed, seduction, and permission.
It was a city capable of making people forget themselves, if only for a while.
I forgot myself there too.
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